副生水素を利用した水素ビジネス

副生水素とは、主目的とする製造物の製造プロセスにおいて副次的に発生する水素のことです。
近年、カーボンニュートラル社会の実現に向けて水素エネルギーの注目が高まり、今後の水素需要の増加が予想されています。
現状有効利用できていない副生水素がある企業で、それらを活用した水素ビジネスへの新規参入が検討されています。
ここでは副生水素を利用した水素ビジネスの取り組みや、新規参入における有効なソリューションをご紹介いたします。

副生水素が発生する製造プロセス例

例として下記の製造プロセスにおいて、副生水素が発生することがあります。

  • 鉄鋼製造
  • 石油精製
  • エチレン製造
  • 苛性ソーダ製造
  • アンモニア製造

発生した水素の用途が確立されているケースもあれば、一部の水素は有効利用されているものの未利用の水素が発生しているケースもあります。副生水素の利用状況は、製造プロセスや企業によって様々です。

水素ビジネスの動向

水素社会実現に向けた活動をまとめて水素ビジネスと呼ばれています。
地球温暖化対策として、水素エネルギーの活用は非常に期待が高く、技術の発展も著しいです。数十年後の社会における水素は、私たちの生活になくてはならない存在になると予想されます。
本格的な導入に向けて、現時点から水素ビジネスに新規参入される企業が増えています。

副生水素利用の課題

副生水素を有効利用するために、エネルギー資源としての活用や外販を検討する企業もあります。
しかし副生水素の利用には以下のような課題があります。

そのままでは利用できず精製処理が必要

副生水素をそのまま利用できない理由の一つは、水素の純度にあります。
製造源により発生する副生水素の純度は異なり、純度が低い場合には適切な精製処理を行う必要があります。

また副生水素を外販する場合には、圧縮機や貯蔵設備などの出荷施設も必要です。

供給量が安定しない

副生水素はあくまで副産物であり、主産物(鉄鋼や石油、苛性ソーダなど)の生産量に比例して発生します。
そのため、副生水素だけでは水素の供給量が不安定になることがあります。
主産物の需要が副生水素の製造量に影響を与えるほか、主産物の増産によって水素の製造量を増やすことができない場合もあります。

水素社会の実現を目指すには副生水素だけでは賄えない

そもそもカーボンニュートラル社会を実現するためには、水素エネルギーを広く活用する必要があります。
社会全体の水素需要を考慮すると、副生水素だけではその需要を賄うことはできません。

新たなソリューションを活用した水素製造が求められています。

水電解装置での製造を組み合わせて、水素製造を事業化

水電解装置とは、水を電気分解し、水素や合成ガスを生成する装置のことです。
エレクトロライザーとも呼ばれます。

水電解装置のメリット

水電解装置は、水素社会の実現に向けて有効な装置として注目されています。

そのメリットの一つは、グリーン水素の製造が可能であることです。
水素は生成方法によって色分けされており、二酸化炭素を排出せずに生成された最も環境に優しい水素は「グリーン水素」と呼ばれます。ちなみに、副生水素は「ホワイト水素」と呼ばれています。
水電解装置は、再生可能エネルギーにより発電(太陽光発電や風力発電)された電力を活用することで、グリーン水素を製造します。
また、余剰電力の有効利用にも貢献します。

副生水素だけでなく、水電解装置を併用することで、安定した水素供給が可能になります。

水電解装置の種類

水電解装置は、構成要素によっていくつかの種類に分けることができます。

方式 プロトン膜型(PEM) アニオン膜型(AEM) アルカリ水型(AE)
特長 水電解効率が高く、
小型化しやすい。
水電解効率が高く、
構成材料が比較的低コスト
構成材料が比較的低コスト
電解質 プロトン膜 高耐久アニオン膜 アルカリ溶液
触媒 貴金属 非金属 金属

従来の水電解装置はプロトン膜型とアルカリ水型の2つでしたが、新たに開発されたのがアニオン膜型です。

プロトン膜型は、水電解効率が高く小型化しやすい特長がありますが、触媒に貴金属を使用するため高コストであることが課題でした。
一方アルカリ水型は、構成材料が比較的低コストであるものの、小型化が難しく、電解質に高濃度のアルカリ溶液を使用するため危険性が高いことなどが課題です。
そこでアニオン膜型は、プロトン膜型とアルカリ水型の双方の課題を解決する新たな方式として開発されました。

現在それぞれの方式で研究開発が進められていますが、特にプロトン膜型とアニオン膜型が注目されています。
プロトン膜型とアニオン膜型の共通点は、その構成要素にMEAを用いることです。

MEAを用いた水電解装置の仕組み

プロトン膜型・アニオン膜型の水電解装置は要素を大きく分けると、セパレータとMEAによって構成されています。
セパレータとはカーボンや金属で作られ、セル同士の境界を形成する板です。
MEAとはGDL(電極)で挟んだ電解質と、その間に触媒が塗布されたもののことです。

水電解装置は、MEAをセパレータで挟んで「セル」を製造し、このセルを多数重ねてスタック化することで構成されます。
水素を生成するための水の電気分解は、一つ一つのセル内部で行われ、そのコアとなる部分はMEAです。

MEA製造に有効なソリューション

MEA製造において、Sono-Tekの超音波スプレーが有効なソリューションとして注目され、触媒塗布の工程に採用されています。

プロトン膜型で使用される触媒材料は、白金などの貴金属であり高コスト化の原因の一つです。
超音波スプレーによって霧化された触媒は、非常に薄い塗膜を形成することができ、触媒材料の消費量削減に貢献します。

また、アニオン膜型で使用される触媒材料は、密度が高いため沈殿しやすく、塗布時の不均一性が生じます。触媒が均一に塗布されないと、水電解効率の低下に繋がります。

Sono-Tekの超音波スプレーは、噴射前にシリンジポンプ内に超音波振動を加え、沈殿していた粒子が触媒インク内に均一に分散されるよう撹拌を行います。さらに超音波による粒子の分散で、均一な塗布を実現するため性能の向上に貢献します。

当製品は研究開発用の小型のモデルから、量産に対応できるモデルまで幅広いラインナップを取り揃えております。
水素ビジネス参入に向けた研究開発から量産までシームレスに展開が可能です。

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