ペロブスカイト太陽電池製造の課題から見る、超音波スプレーの可能性

ペロブスカイト太陽電池は、薄く軽量で柔軟性にも優れた次世代型太陽電池として期待されています。
その一方で実用化に向けては、層の均一成形や界面品質、セルの耐久性など、製造面でまだ様々な課題を抱えています。

こうした課題へのアプローチの一つとして、微細な液滴を均一に塗布できる「超音波スプレー」が注目されています。

ここでは、ペロブスカイト太陽電池製造における課題を整理しながら、超音波スプレーがどのように活用できる可能性があるのか、解説いたします。

ペロブスカイト太陽電池について

ペロブスカイト太陽電池とは、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を持つ材料を用いて発電を行う太陽電池です。
薄い層を積層して製造するため、従来のシリコン太陽電池と比べて軽量化や薄型化、フレキシブル化がしやすいという特長があります。

現在は研究段階での効率化だけでなく、実用化を見据えた大面積化や耐久性向上、製造プロセスの確立に向けた研究開発が進んでいます。
発電のコアとなるペロブスカイト層に加えて、電子輸送層や正孔輸送層(ホール輸送層)などについても、安定した薄膜形成が重要なテーマとされています。

ペロブスカイト太陽電池の構成要素

こうした中で、製造技術の一つとして近年注目を集めているのが「超音波スプレー」です。

超音波スプレー技術について

超音波スプレーは、材料に超音波振動を与え、液滴を形成する塗布装置です。
スプレー先端(チップ)上に押し出された材料を、超音波で振動させることで霧化し、対象に吹き付けます。

Sono-Tek社超音波スプレーの仕組み

「スプレー」というと、一般的にはエアスプレーを想像されがちですが、超音波スプレーはより薄く均一な膜を形成できる点に強みがあります。
圧縮空気の力で液体を霧化するエアスプレーとは異なり、材料の性質に影響するような電圧や圧力をかけないため、「粒子単位での均一さ」も実現できることが大きな利点です。

こうした特長から、燃料電池の製造や医療器具への塗布など、膜厚や表面状態の精密な制御が求められる分野で広く活用されています。

ペロブスカイト太陽電池製造における課題

ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて、研究開発が進められています。
ここでは、テーマとなっている製造の課題について整理します。

電子輸送層・正孔輸送層の均一形成

電子輸送層・正孔輸送層(ホール輸送層)は、薄い膜の中に材料粒子が偏りなく分散し、面全体で膜厚や性質が均一な状態が理想とされています。

輸送層の製造には、酸化チタン(TiO₂)や酸化ニッケル(NiO)などの材料を溶媒に溶かした溶液が用いられています。
これら溶液は、塗布時に粒子の偏りや膜厚のばらつきが生じやすく、薄さと均一性を両立した膜を安定して形成できる塗布方式の探索が行われています。

粒子レベルまで均一な輸送層を形成できれば、電子や正孔をより安定して輸送し、本来遮断すべき電荷の流入や再結合を抑えることにつながります。

表面平坦性・界面品質の向上

ペロブスカイト層や各輸送層など、ペロブスカイト太陽電池の層における界面は、それぞれの表面に凹凸が少なく、層同士が密着した状態が求められます。

一方で、輸送層には金属酸化物などの粒子を含む材料が用いられることが多く、薄膜形成の過程で表面に微細な凹凸が生じやすいという課題があります。
また、ペロブスカイト層自体も結晶構造による凹凸を持つため、積層した際に界面を平坦に保つ製造方法が検討されています。

層同士の界面品質を高めることができれば、ペロブスカイト層で生じた電子や正孔をより効率よく輸送しやすくなり、発電効率の向上につながります。
また、界面の隙間を減らして密着性を高めることは、水分や空気が入り込む経路を抑えることにもつながるため、耐久性の向上も期待できます。

セルの耐久性向上

ペロブスカイト太陽電池の実用には、発電性能を長期間維持できることが求められます。
特に、外部からの水分や熱などの影響を抑え、ペロブスカイト層や各界面を安定した状態に保つことが重要です。

しかし、ペロブスカイト材料は湿気や熱などの環境要因によって劣化しやすく、これらは結晶構造の変化や材料の分解を引き起こし、セルの性能低下や寿命短縮につながります。
こうした安定性の問題は、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた主要な課題の一つとされています。

そのため、材料自体の安定性を高める研究に加えて、水分などの侵入を抑える保護膜や封止技術の開発も進められています。
セル表面に均一なバリア膜を形成し、外部環境から保護することができれば、劣化の進行を抑え、長寿命化につながることが期待されています。

ペロブスカイト太陽電池製造で超音波スプレーが注目される理由

では、先ほど取り上げた3つの課題に対し、超音波スプレーがどのように活用できる可能性があるのかをご紹介いたします。

均一に分散した微細液滴による塗布

前述のとおり、輸送層の製造では、薄い膜の中に材料粒子が偏りなく分散し、面全体で膜厚や性質が均一であることが重要です。

超音波スプレーは、ノズル先端の超音波振動によって塗布液を微細かつ均一なサイズの液滴に霧化します。
小さな液滴を一定量ずつ塗り重ねることで、薄く膜厚のそろったコーティングを形成しやすいため、輸送層の製造に適しています。

さらに、超音波振動は溶液の粒子の凝集や偏りを抑えるためにも利用できます。
特に、Sono-Tek社の超音波スプレーでは、溶液を充填するシリンジ内にも超音波振動を与える機構を備えており、粒子の沈降や偏りを抑えながら塗布が可能です。

このように、液滴サイズと膜厚だけでなく、膜中の粒子分布まで均一な塗布を実現することは、各輸送層の性能向上に貢献します。

粒子の分散による平坦な界面形成

ペロブスカイト太陽電池の各層では、表面の凹凸を抑え、層同士ができるだけ均一に接触できる界面を形成することが求められます。

超音波スプレーによる、溶液中の粒子を分散させながら噴霧できるという特長は、平坦な界面形成にも貢献します。
粒子が細かく均一に分散した状態で塗布されることで、形成される膜の中でも粒子が石垣のように緻密に並び、表面の凹凸を抑えやすくなるためです。

粒子の分散状態を制御しながら、平坦な薄膜や界面の形成を考えるうえで、超音波スプレーは有効なソリューションといえます。

保護膜・機能膜の形成

ペロブスカイト太陽電池の耐久性向上のために、近年では、セル表面にポリマーなどの保護膜の形成や、既存の層の間に新たな機能層を追加するアプローチが進められています。

具体的には、ポリスチレンをスプレーコーティングして水分の侵入を抑えた研究や、ペロブスカイト層と正孔輸送層(ホール輸送層)の間に高機能材料を塗布する、などの取り組みが報告されています。
こうした保護膜・機能膜では、必要な機能を持たせながら、下層を均一に覆う薄い膜を形成することが重要です。

超音波スプレー塗布による均一で薄い膜の形成は、これらの保護膜・機能膜にも適用できる可能性があります。
また、Sono-Tek社の超音波スプレーは、研究開発向けの小~中面積モデルから、大面積塗布モデル、生産ラインへ組み込むモデルまで幅広いラインナップがあります。
研究段階でのコーティング条件の検討から、大面積化・生産工程を見据えた設備検討まで、用途やフェーズに応じて適用できます。

まとめ

ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて、それぞれの課題を解決するため、様々な研究開発が進められています。

超音波スプレーは、微細で均一な液滴を形成できることや、塗布液中の粒子を分散させやすいことから、機能層の製造や保護膜のコーティングなど、ペロブスカイト太陽電池の製造に有望なソリューションです。

弊社では、超音波スプレーの中でもデファクトスタンダードのSono-Tek社のソリューションをご提案しています。
ペロブスカイト太陽電池をはじめとする薄膜・機能膜形成への超音波スプレー活用をご検討の際は、ぜひお問い合わせください。

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