インクジェット材料の吐出評価とは?

インクジェット材料の吐出評価とは、インクジェットヘッドから液体を吐出した際の液滴形成や吐出安定性を観察し、材料がインクジェット印刷に適しているかを確認するための評価です。
近年、プリンテッドエレクトロニクスや機能性コーティングなどの分野でインクジェット技術の応用が広がっています。
それに伴い、インク開発だけでなく様々な機能性材料の分野でも、インクジェット用途を意識した材料開発が進んでいます。
ここでは、インクジェット材料の吐出評価とは何かを整理し、材料特性だけでは分からない印刷適性をどのように評価するのか、その基本的な考え方と確認すべきポイントを解説します。
インクジェット材料開発で
「吐出評価」が重要な理由
近年、インクジェット技術はプリンテッドエレクトロニクスや機能性コーティング、電子材料分野などで活用が広がり、研究開発用途としても注目されています。
従来は主に印刷用途で利用されてきた技術ですが、現在では微量塗布や高精度なパターニングが可能な手法として、様々な分野で応用が進んでいます。
こうした背景から、インクジェットインクを開発するインクメーカーだけでなく、樹脂やバインダー、分散剤などの添加剤メーカー、さらにはナノ粒子などの機能性材料を開発する材料メーカーにおいても、インクジェット用途を意識した材料開発が行われています。
具体的な検討事項としては、自社の材料がインクジェット用途で使用できるか、またインク材料としてどのように機能するのかといった点が挙げられます。
その中で重要になるのが、実際にインクジェットヘッドから液体を吐出した際の挙動を確認する「吐出評価」です。
材料がインクジェットプロセスに適しているかを判断するためには、実際の吐出挙動を観察し、印刷プロセスとの適合性を確認することが重要です。
材料特性だけではインクジェット適性は判断できない
材料開発においては、粘度や表面張力、粒径、分散安定性などの物性値が一般的な評価項目として測定されます。
これらの特性は、インクジェット用途における材料適性を検討する上でも重要な指標であり、材料設計や配合を検討する際の基本的な情報です。
しかし、実際のインクジェット吐出では、これらの物性値だけで液滴の挙動が決まるわけではありません。
吐出時の液滴形成や吐出の安定性は、インクジェットヘッドのノズル構造や駆動波形に加え、それらの条件の組み合わせで変化する材料の状態など、さまざまな要因に左右されます。
そのため、材料特性の数値だけでインクジェット印刷への適性を完全に判断することは難しく、実際に吐出させた際の挙動を確認する評価が重要です。
インクジェット吐出評価とは
何をする?
インクジェット材料の吐出評価では、実際にインクジェットヘッドから液体を吐出させ、その挙動を観察することで材料の印刷適性を確認します。
ここでは、吐出評価で確認する代表的な評価項目を紹介します。
液滴形成の評価
インクジェット吐出評価では、まずインクジェットヘッドのノズルから吐出された液体が、どのように液滴として形成されるかを確認します。
インクジェット印刷では、ノズルから吐出された液体が安定した一つの液滴となって飛翔することが重要です。
この液滴形成の状態は吐出の安定性に影響し、印刷品質にもつながります。
吐出の観察では、ノズルから吐出された液体がきれいな球状に形成されているか、不要な微小液滴(サテライト滴)が発生していないか、複数回の吐出における液滴のばらつきがないかなどを確認します。
このとき、材料の粘度や表面張力などの物性値が適切であっても、実際に吐出させると液滴がうまく形成されない場合があります。
そのため、実際の吐出挙動を観察し、液滴が安定して形成されるかを確認することが重要です。
サテライト滴の観察
吐出評価では、液滴が形成される際にサテライト滴が発生していないか確認することも重要です。
サテライト滴とは、主となる液滴の後ろに連なって発生する小さな液滴のことで、液滴形成が不安定な場合に発生しやすくなります。
サテライト滴が多く発生すると、印刷時に着弾位置のばらつきや不要なインク付着が起こり、パターンの精度や印刷品質に影響を与える恐れがあります。
材料の粘度や表面張力、さらにはインクジェットヘッドの駆動条件などによってサテライト滴の発生状況は変化するため、吐出評価を通じて適切な材料設計や吐出条件の検討を行うことが重要です。
吐出安定性の評価
液滴単体だけでなく、安定して連続的に吐出されるかどうかも重要なポイントです。
インクジェット印刷では、ノズルから一定の条件で液滴を繰り返し吐出するため、吐出のタイミングや液滴サイズが安定していることが求められます。
吐出が不安定な場合、液滴のサイズがばらつく、材料が吐出されないなどの問題が発生することがあります。また、吐出の途中でノズル詰まりが起きると、印刷品質の低下や装置トラブルにつながる恐れもあります。
そのため、一定時間連続して吐出させながら液滴の挙動を観察し、液滴の大きさや吐出間隔が安定しているか、吐出が途切れたり乱れたりしていないかを確認します。
こうした評価により、材料がインクジェットプロセスにおいて安定して使用できるかを判断することができます。
液滴の飛翔挙動の観測
インクジェット吐出評価では、吐出された液滴がどのような軌道で飛翔するかも重要な確認項目です。
液滴のサイズや飛翔速度、飛翔方向が安定しているかどうかは、印刷時の着弾精度やパターン形成の品質に大きく影響します。
例えば、液滴が斜め方向に飛翔したり、液滴サイズや速度にばらつきがある場合、基板上での着弾位置がずれたり、塗布量が不均一になる可能性があります。
こうした観察により、材料が安定した吐出挙動を示すかを評価するとともに、材料特性と吐出条件の関係を把握することができます。
材料メーカーが
吐出評価を行うメリット
これらの吐出評価は、インクメーカーだけでなく材料メーカーにとっても重要な意味を持ちます。
ここでは、材料メーカーが吐出評価を行うことで得られる主なメリットについて紹介します。
材料の用途提案がしやすくなる
自社材料について吐出挙動のデータを保有していると、インクメーカーや装置メーカーに対してインクジェット用途での適用可能性を具体的に示すことができます。
例えば、安定した吐出が確認されている材料であれば、インク材料としての検討を進めやすくなり、用途提案の説得力も高まります。
材料開発の方向性が明確になる
吐出評価によって得られたデータは、材料開発にも役立ちます。
材料の粘度や表面張力、配合条件などが吐出挙動にどのように影響するかを把握することで、インクジェット用途に向けた材料開発の方向性を検討しやすくなります。
インクジェット用途市場への参入
吐出評価を行うことは、自社材料をインクジェット用途へ展開するための検討にも役立ちます。
インク材料としての適用可能性を具体的に検討できるようになり、インクジェット用途市場に向けた材料提案や新たな用途開拓につながります。
吐出評価に必要なもの
インクジェット材料の吐出評価を行うためには、実際に液体を吐出させてその挙動を観察するための環境が必要です。
ここでは、吐出評価を行う際に一般的に用いられる装置やシステムについて紹介します。
テスト用印刷装置
インクジェット材料の吐出評価を行う際には、インクジェットヘッドから液体を吐出させ、基板上に印刷して挙動を確認するためのテスト用印刷装置が必要です。
こうした装置では、プリントヘッドやインク供給系、駆動条件などを設定しながら試験印刷を行い、液滴の着弾状態や印刷品質を評価することができます。
実際の基板上でのインクの広がり方や付着性なども確認できるため、材料と印刷プロセスの適合性を検討するうえで重要な評価ポイントです。
このような評価が可能な研究開発用途向けのテスト用印刷装置として、Print Labがあります。
Print Labは、インクジェット材料やプリントヘッドの評価を目的とした卓上型のインクジェットR&Dプラットフォームで、インク、基板、プリントヘッドなどさまざまな組み合わせで印刷試験を行うことができます。
また、Print Labはデスクトップサイズのコンパクトな装置で、A4サイズまでの試験印刷に対応しており、研究開発段階での評価を小規模から始められる点も特徴です。
Print Lab
研究開発用インクジェット印刷装置です。
A4サイズのテスト印刷が可能で、主要メーカーのインクジェットを付け替えて印刷できます。
材料メーカーの吐出評価など、まずはミニマムでテストシステムを構築したいケースに最適です
インクジェットヘッド
インクジェットヘッドとは、液体を微小な液滴として吐出するための装置で、ヘッド内部のノズルから液体を吐出することで、基板上に液滴を着弾させてパターンや塗布を行います。
テスト用印刷装置にヘッドを付けて試験することで、さまざまな条件での吐出挙動を確認でき、材料のインクジェット適性をより柔軟に検証することができます。
ノズル構造や駆動方式、吐出量などの仕様によって液滴の形成や吐出挙動が変わるため、評価したい材料や用途に応じてインクジェットヘッドを変更しながら試験を行える環境があると理想的です。
弊社はインクジェット研究用観測システムのトップベンダーとしての立場から、これまでの知見を活かした中立な立場でのご案内・ご提案が可能です。
インクジェットヘッドを用いた研究開発を検討される方は、お気軽にお問い合わせください。
吐出評価用観測システム
ここまで、吐出評価のポイントや重要性について解説してきました。
しかし、実際に液滴形成やサテライト滴、吐出安定性などを観察するには、適切な評価環境が必要です。
そこで活用されるのが、インクジェット吐出評価のための専用観測システムです。
中でもJetXpertは、インクジェットの研究開発におけるデファクトスタンダードの観測システムです。
インクジェットヘッドから吐出された液滴の形成状態や体積、速度、飛翔角度などを詳細に測定できます。吐出評価に必要な観測機能が一体化されており、材料の評価を効率的に行うことができます。
また、JetXpertはテスト用印刷装置と組み合わせて使用することも可能です。
例えば、先ほど紹介した Print LabにJetXpertを搭載すれば、液滴観測と印刷試験を同じシステム内で行うことができます。
JetXpert
国内外の多数のインクジェット研究で用いられています。
液滴の吐出を観測し最適化することで、インクジェット材料の吐出評価を効率化できます。
まとめ
インクジェット材料の評価では、粘度や表面張力などの物性値だけでなく、実際の吐出挙動を確認することが重要です。
液滴形成や吐出安定性などを観察することで、材料がインクジェット用途に適しているかをより実践的に判断することができます。
また、吐出評価を行うことで、材料の用途提案や開発の方向性の検討などにも役立ちます。
インクジェット材料の吐出評価をはじめとする研究開発についてご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。






