ペロブスカイト太陽電池のつくり方

ペロブスカイト太陽電池とは、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を持つ材料を用いて発電を行う太陽電池です。
当コラムでは、ペロブスカイト太陽電池の基礎知識から製造プロセスまで、研究開発の動向を踏まえて分かりやすく解説します。
また、ペロブスカイト太陽電池の製造において近年注目のインクジェット技術についても、有効なソリューションと併せてご紹介いたします。

ペロブスカイト太陽電池について

ペロブスカイト太陽電池は、複数の層からなる機能層が太陽光を吸収して、電子と正孔を生成・輸送することで発電します。
まずは、ペロブスカイト太陽電池の基本構造と、従来の太陽電池と比較した特長について解説します。

基本構造

ペロブスカイト太陽電池は、5つの層を積層して構成されています。

まず、中心に位置するのが、発電を担うペロブスカイト層です。ここで太陽光を吸収することで、電子と正孔が生成されます。
このペロブスカイト層を挟むように両側に位置するのが、電子輸送層と正孔輸送層(ホール輸送層)です。
ペロブスカイト層で生成された電子は電子輸送層へ、正孔は正孔輸送層へ集められます。
そしてその外側、正孔輸送層側には裏面電極、電子輸送層側には透明導電膜が設けられており、電荷を帯びた電子・正孔が外部回路へ移動することで電流を発生させます。
ペロブスカイト太陽電池は、このような仕組みで発電を行っています。

また、上記の解説および図解は、順型構造の積層順を示したものです。
近年では逆型構造のペロブスカイト太陽電池も見られ、電子輸送層と正孔輸送層の配置を逆にして構成されます。

他の太陽電池と比較した強み

太陽光発電として現在使用されているシリコン系太陽電池などと比較して、ペロブスカイト太陽電池はいくつかの優れた特長を持っています。

発電量を拡大しやすい

他の太陽電池と比較したペロブスカイト太陽電池の大きな特徴のひとつが、薄くて軽く柔軟性のある構造です。
これにより、建物の壁面や窓、小型デバイスなど、従来は設置が難しかった場所への太陽電池導入が広がります。

また、ペロブスカイト太陽電池は光吸収性能が高く、弱い光の下でも発電反応を起こせる点も特徴です。
曇り空や室内光などの低照度条件における発電効率の高さが期待されています。

このようにペロブスカイト太陽電池は、柔軟に発電の機会を増やし、トータルでの発電力を拡大しやすいことが強みです。

製造しやすい

ペロブスカイト太陽電池は、材料コストを抑えやすい点も特徴です。
ペロブスカイト材料は高い光吸収性能を持つため、薄い膜でも性能を確保しやすく、材料使用量を抑えることができます。

さらに、後述するペロブスカイト太陽電池の製造プロセスは、近年様々な研究開発が進められています。
それにより、真空装置やレーザー加工などの大規模な設備を必要とせず、比較的簡易に、大量生産しやすい製造プロセスの実現が期待されています。

ペロブスカイト太陽電池の
製造工程

ペロブスカイト太陽電池は、基板上に形成された透明導電膜の上に電子輸送層、ペロブスカイト層、正孔輸送層、裏面電極を積層して製造されます。
ここでは、各層の代表的な製造方法について、近年の動向を取り入れて解説します。

裏面電極の製造

裏面電極は、発電によって生じた電荷を外部回路へ取り出す役割を持つため、導電性の高い金属材料が多く使用されます。
具体的には、金や銀などの金属材料を、真空蒸着などの方法で薄膜として形成するのが一般的です。

近年では、真空プロセスの削減やデバイスの長寿命化を目的として、カーボン材料を電極に用いる研究も進められています。
こうした材料を活用することで、インクジェットなどの印刷装置を用いた製造方法も検討されており、量産化に向けた技術開発が進められています。

ペロブスカイト層の製造

ペロブスカイト層は発電の中心となる重要な層です。一般的には、ペロブスカイト前駆体溶液を塗布し、その後結晶化させることで薄膜を形成します。
これまでは、主にスピンコートやダイコートによる製造が主流でしたが、材料ロスが多いことや量産プロセスへの適用に課題があるとされてきました。

そこで近年、インクジェット技術を用いたペロブスカイト層の製造に注目が集まっています。
インクジェットは必要な箇所に狙って材料を塗布できるため、材料ロスを低減できるほか、パターン形成にも対応可能です。
さらに、量産を見据えたRoll-to-Rollプロセスにも対応しやすく、インクジェット技術はペロブスカイト層の主要な製造方法の一つになりつつあります。

電子輸送層・正孔輸送層の製造

電子輸送層と正孔輸送層は、ペロブスカイト層で生成された電子と正孔をそれぞれの電極へ運ぶ役割を持つ層です。
これらも導電性のある材料が用いられますが、電子輸送層と正孔輸送層では役割が異なるため、使用される材料もそれぞれ異なります。

これまでは、主に真空蒸着やスピンコートによる製造が多く見られましたが、近年スプレー塗布を活用した方法も広まっています。
特に超音波スプレーのように材料の微細な霧化が可能で、薄く均一な膜を形成できる方法が求められています。

また、パターン形成が可能なインクジェット技術も、注目されている製造方法の一つです。
使用する材料の検討と併せて、製造プロセスの最適化に向けた研究開発が進められています。

インクジェットによるペロブスカイト太陽電池製造が注目されている理由

ここまでペロブスカイト太陽電池の各層の製造方法を見てきたように、層ごとにさまざまな製造方法が検討されています。
その中で、多くの工程においてインクジェット技術が有力な選択肢として挙げられています。

インクジェット技術は、近年ペロブスカイト太陽電池の製造プロセスにおいて非常に注目されており、一部では全ての層をインクジェットで形成する試みも進められているほどです。

では、なぜインクジェット技術がこれほど注目されているのでしょうか。その理由について解説します。

量産を見据えた製造プロセスの最適化

ペロブスカイト太陽電池は、量産化に向けて「製造プロセスの簡略化」と「コスト低減」が重要な課題となっています。
インクジェット技術が検討される以前は、電極やペロブスカイト層のパターニングを行うためにレーザー加工が用いられていたり、金属材料の薄膜形成において真空蒸着装置を必要としていたりと、工程が複雑で設備コストの大きい製造プロセスが一般的でした。

インクジェット技術を活用すると、真空蒸着に代わり印刷によって膜を形成し、パターン形成があらかじめ可能なため、後処理のレーザー加工も削減することができます。
このように、インクジェット技術はペロブスカイト太陽電池の製造プロセスをよりシンプルにし、量産や実用化に向けた製造体制の構築に貢献する技術として注目されています。

意匠性の向上

ペロブスカイト太陽電池は薄膜で透明性の高い材料を使用できるため、意匠性を持たせたデザイン設計が可能な点も大きな特徴です。
特にインクジェット技術を活用することで、発電層や電極層にパターンや柄を直接形成できるため、従来の太陽電池とは全く異なるデザイン性を実現できるようになります。

例えば、建物の窓ガラスや外壁、屋内のガラスパーテーションなどに設置する場合でも、発電機能を維持しながら模様やグラフィックを取り入れたデザインを実現できる可能性があります。
これにより、景観や建築デザインと調和させながら発電機能を持たせるといった活用が期待されています。

ペロブスカイト太陽電池の製造に向けたインクジェット研究開発に有効なソリューション

インクジェット技術は、ペロブスカイト太陽電池の製造方法として有望な技術です。
発電性能や耐久性を高めるための材料開発、各層の最適な膜厚やパターンなど、ペロブスカイト太陽電池を構成する様々な要素の検討事項と併せて、インクジェットでの研究開発は引き続き進められています。

これらの研究開発を進めるうえで、インクジェットによる材料吐出の安定性や膜形成品質を適切に評価できる環境が重要です。

そこで必携となる研究開発用ソリューションが、imageXpert社のインクジェット研究開発用装置です。
ペロブスカイト太陽電池の膜形成では、使用する材料やインクジェットの吐出条件などによって、膜の品質が変化することがあります。
これらの変化が、どの影響によってなぜ発生したのかを特定するのに役立つのが、「飛翔液滴観測装置」です。
インクジェットのノズルから吐出された液滴を詳細に観察し、膜の品質に影響を及ぼす課題の特定に貢献します。

お勧めの観測システム JetXpert

インクジェットの研究開発におけるデファクトスタンダードの観測システムであり、国内外の多数のインクジェット研究で用いられています。
液滴の吐出を観測し最適化することで、インクジェット技術開発を効率化できます。
あらゆるヘッドに対応し、すぐに観察環境が整います。

また、飛翔液滴観測装置と併せて「カスタムインクジェットプリンター」の活用も効果的です。
量産を見据えたインクジェット技術において、まずは試作規模としてペロブスカイト太陽電池の膜形成するようなケースにおいて最適です。
ラインナップには、A4サイズの印刷が可能なデスクトップタイプもあり、材料やパターンの検討にもお勧めです。

研究開発用カスタムインクジェットプリンター

液滴観測と一体型のプリンターです。
観測で使用したヘッド、波形、インクをそのまま印字へ移行できます。

デスクトップ型でお手軽なラボ用モデルもございます。

まとめ

ペロブスカイト太陽電池は、高い発電効率や柔軟性を持つ次世代太陽電池として注目されています。
特に近年は、量産化を見据えた製造プロセスの研究が進んでおり、その中でもインクジェット技術は有望な手法の一つです。

インクジェット技術を活用した研究開発の際は、ぜひ弊社に一度ご相談ください。
多くの企業が実践しているインクジェット技術R&Dのベストプラクティスをもとに、サポートいたします。

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